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ギブス

「君さ・・・我慢強いね。折れてるよ、ちゃんと」

 

ちょっと意地悪そうな眼をした外科医が、口の端を持ちあげて言う。僕の目は今さっき撮った右手のレントゲンにくぎ付けになる。ウソだろ?だって骨折ってもっと痛いものだろ?触れるだけで体に電流が走るような?少なくとももっとドラマティックな音楽がバックに流れて、それで救急車が出動しなくては。でも写真の中の真っ白な掌の骨は、まるで両手で折ろうとしたけど下側だけつながっている割り箸みたいで、それは「ヒビ」なんて言葉でお茶を濁せるもんじゃなかった。折れてる、ちゃんと。

 

初めて来た整形外科はお年寄りと主婦でいっぱいだった。なぜ主婦が?きっと運動不足の主婦が家の階段で転んで骨を折るんだ。僕は病院の中だと言うのに、人目もはばからず左手で携帯のキーを打ちまくる。泣きそうな、笑いだしそうな、変なテンションの中で、冗談めかした報告と、本気のSOSメール。『骨折だって(笑)』『キャー!』『とりあえず領収書もらっとけ』僕はちょっと考えた後、彼女にもメールを出した。まだ挨拶に毛が生えたくらいしか喋ったことはないけど、この前はじめてアドレスを交換した子。『やっちゃったよ・・・骨折だって!右手使えないってかなり罰ゲームなんですけど・・・。とりあえず洗濯物がたためないよね(笑)』あざといかな?出してからちょっと思う。でも、まあ、ひとまず助けが欲しいのは本当だ。

 

 右手が使えない生活は想像した以上にサバイバルゲームだった。まずボタンダウンのボタンがとめられない。ネクタイが締められない。勤め先は結構堅いとこだから、Tシャツで通勤ってわけにもいかない。汗だくになって身づくろいをして、満員電車で右手をかばう。財布はいつもと逆の左のポケットに。レジのおつりは店員さんに財布の中に放り込んでもらう。職場の視線がイタい。「まあとにかく体を治すことが先決だから。無理しないでね」っていう大人達の慰め。でも右手に投げられる視線は、「このくそ忙しいのに・・・、その手でパソコン使えんの?」って言ってる。すみません、すみません、でもね、この右手を地面の固さが粉砕する0.5秒前に僕が放ったシュートは、稲妻みたいな軌道を描いてゴールに突き刺さったんですよ?試合も3対2で勝ったんです。名誉の負傷なんですよ?

 

 どうにかこうにか1日を終え、辿り着いた部屋は初めての一人暮らしに浮かれる大学生の部屋みたいに自由に荒れてる。ひとまずカビたパンを捨てて、水槽の水を替えなくては。そう思うのに体が動かない。ギブスに顔を近づけると、プールの更衣室みたいな黴っぽい匂いがする。ビー、ビー、携帯電話が振動する。あの子からのメール。『ウソ!ほんとに骨折?!それは事件だね・・・。無理しないで、早く治るといいね。洗濯がんばってね♥』僕は仰向けにベッドに倒れこんで目を閉じる。華麗に決まったシュートを何度も思い浮かべる。

 

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他に書くことねえ~

 ひざ下のグジュグジュしたスリ傷がなかなか癒えないな~と思って良く見たら軽く肉が見えてます。(肉)、じゃなかった(笑)。で、さっきから扇風機の風をずっとあててとりあえず乾かそうと思ってるんだけど、この民間療法は間違っていないよね?
 
 街を歩いていて向かいから歩いてくる人達が全部ディフェンダーに見えたり、電信柱が2本並んでるとゴールポストに見えたり、横断歩道が青になって歩き出す時ついオフサイドじゃないか確かめたりする毎日ですが、わたし大丈夫ですかね?社会生活に支障が出るくらいフットサルって中毒性があるものでしたっけ?少なくともおれが買った教則本にはそんなこと書いてなかった。さっき”フットサル中毒”で検索したら、552件ヒットしたよ。大丈夫、君だけじゃない!
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やったよ!母さん!

 女性は男性のどんな仕草にセクシーさを感じるか?っていうアンケートでいつも3位か4位には「左足でシュート決めた時」ってランクインしてるけど、でもそんな事は関係なくって、とにかく左足のシュートが上達してるのは嬉しいっすよ!動画見ると、かなり理想のイメージに近づいてる。右手の動きだけが、なんかちょっと奇妙だけど(いったん振り上げて、意味無くクイッて下げてから巻き込んでる)、でもそれ以外は、軸足の踏み込む位置も、軸足の抜き方も、蹴り足の振りかぶりの大きさも、シュパッってしならせる感じも、インパクトの感じも、ちゃんと狙い定めてる感も、フォロースルーの感じも、言えなかった好きという言葉も、合格点ですよ!やーべー、この嬉しさは人生で6位くらいに入るよ(5位は初めてミニ四駆買ってもらった時)。ヒャッホウ!
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シュートと女性は美しく

 部屋の中でリフティングしてたら、花瓶を倒して割った。小さいころだったら「部屋でボール禁止令」が速やかに発令されてたところだけど、一人暮らしなので何事もなかったかのように練習再開です。大人になるってこういうことなのかな?ってちょっと思った。
 
 
 この中の誰か一人は大成するだろう、ってか全員そろって日本のFWを変えてくれっていう今期待の3人。3人ともミドルシュートが猛烈に巧いんだよなあ・・・。今までこういうシュートの蹴り方をする日本人選手ってあんま見たことない気がする。3人とも共通してるのは、「フォロースルーは小さい(あんまり蹴り足を上げない)」、「蹴った足で着地してる(蹴った後跳んでる)けど、そんなに大袈裟にジャンプしてるわけじゃない」、「膝から下が鞭みたいにシュパーンって動きをする」、「蹴り足と逆の腕の引きよせ方」、「体勢が崩れない」、「左右どっちでも打てる」ってな感じかなあ。これは時代の流れなのか。たまたまみんなこういう蹴り方になったのか。とにかく真似したいものですな~
 
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パラパラディドル、パラディドル

 今ふと思いついたんだが、個人技の練習で、「ルーディメンツ」のようなものを作ったらいいんじゃないだろうか。ルーディメンツとは、みたいな
 
 学生時代ドラムにはまってて死ぬほどドラムばっか叩いてたんだけども、ルーディメンツとかを真面目にやり出してから、急速に巧くなった気がする。ルーディメンツはまあピアノで言う音階練習みたいなもんで、「基本的な動きを体に覚え込ませるためのドリル集」みたいなもんだ。こういう退屈なやつが死ぬほど嫌いな人もいるけど自分結構こういう地味な感じの好きなんすよね。
 
 フットサルでも、自分なりにルーディメンツを作ってだね、こう、試合の前の15分とかに地味にやるだけでも、大分違うんじゃないかなあ。今単発的に色んな技の練習とかしてるけど、一回覚えたやつもすぐ忘れちゃうし、「試合の中で自然に出る」っていうレベルまではなかなか行かないケースが多い。例えば、「右蹴りマネ⇒右切り返し、左アウト⇒(逆の動き)」、「右足裏なめ、右シザース、左アウト⇒(逆の動き)」みたいので1セットにして、コートの端から端まで、とか。
 
 な~んて、オリジナルの思いつきみたいな言い方したけど、実はもうそういう練習の仕方を紹介してる教則本とかDVDはあるんだけどね。まあそこをルーディメンツってシャレた言葉を使ったのがオレのオリジナルだってことでね。
 
 今度スミっこでブツブツ言いながら地味~にやってる俺を見たら、みんなそっとしといてくれよな。
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#1はようすをみている

 ♪テレレレ、テッテッテ~(レベルアップの音)
 
 昨日は#1と公園で強化トレーニングの日。と言っても行楽の親子連れに交じってボール蹴ってただけですが。ボールぶつけちゃったカップル、ごめんなさい。でもそんなところでイチャイチャしてた君たちにも非がないとは言えないよね?
 
 そこでマジ気づいちゃったわけですよ、左足キックのポイントに。どうやら、膝から下を上手く使えてなかったっぽい。股関節を大きく動かすとか、蹴ってからの体重移動とかを意識し過ぎてて、膝下の振りが小さく弱くなってたっぽいよ。なんでそこに気づいたかっていうと、今話題の大迫君とか宇佐美君とかのミドルシュートを見てて、「あんまり大きく振ってない感じなのに、鋭いシュートだなあ」と思ってたんだよね。そこを意識して蹴り出したら、冒頭のファンファーレが鳴ったってわけ。「#5はレベルがあがった!かしこさが1あがった!ひだりあしシュートをおぼえた!」
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